初代 Summarit 50mm f1.5 の話
調子がいい時はノクチにも勝てる!
かもしれない!
室内のまろやかな描写はかなり色気がある (Leica M3 + Summarit 50mm 1.5)
M3購入と同時にライカストアで買ったこいつ。
今ではすっかり取り回しの良さと安定した写りでElmar 50mmにM3の正妻の座を奪われてしまったのだが、M8購入を機に色々遊んでみるとこいつはもしかしてすごい奴なのではないかという思いが湧いてきた。
本当はライカデビューを飾るにあたって、ネットで勉強してきたElmarかSummicronを買うつもりだった。だがElmarは店に無いしSummicronは高い。
今でこそライカ界隈の異常な物価に金銭感覚を麻痺させられているが、当時はたかがレンズ1本に900ユーロも払える人間ではなかった。(E-M10のズームレンズなんて新品1万切りの使ってましたからね)
どうしたもんか。と棚を見渡すとあるではないか!
なに?ずまりっと?見た目高級そうだしF1.5じゃん!
本体と合わせて1000ユーロ以下?よしオッケー
ということでなし崩し的に購入した。
ライカなんだからさぞかし素晴らしい写真が撮れることだろうと息巻いてフィルム1本撮って現像した結果。
うーん…まあこんなもんか…
おじいちゃんの家のアルバムでこういう写真見たよな…
っていうのが正直な感想。
彩度も低ければ解像感もないしコントラストもない。使い捨てカメラみたい…
そしてなによりフレアがひどく、白い壁や雲なんて映り込もうものならヒカリゴケの如く発光している。
正直かなりがっかりしながらも一縷の望みをかけて、レンズに白く映る曇りとチリを取り除くためにレンズ清掃に出してみた。
パリで有名なエッフェル塔近くのフィルムライカ専門の修理屋さん。
2週間ほどかかるけどきれいにしてやるよ!と自信満々に告げられ価格も100ユーロちょいと良心的だった。
清掃の後、南仏に行く予定があったので、今回駄目ならM3ごと手放そうかなんて考えながら使ってみることにした。
そして現像から引き取った写真を現像屋帰りのメトロ車内で見て、ライカショックを受けたのだった。
アヴィニョンにて (Leica M3 + Summarit 50mm 1.5)
今見てみるとそこまで大した出来でもないのだが、当時は、俺はプロのカメラマンにでもなってしまったのか!?なんて驚いたものである。
どれも観光地で売られている絵葉書のような写真ばかりで本当に驚愕だった。
ライカってとんでもねえわ…
心の底から感じた瞬間だった。
アルルにて (Leica M3 + Summarit 50mm 1.5)
初代Summaritのレビューによく見られるのが「フレアが独特なクセ球」という文言ともに掲載されるあまりにもボケボケフワフワな撮影例だが、これはソフトコーティングから来るただの曇りではないかとずっと思っている。
ライカデビューでM3やバルナックを買ってみたはいいが、出てくるのは眠たい写真ばかりでどうにも飽きてデジタルに戻ってしまう人をSNSでよく見かける。
ただでさえ高いライカボディの出費からレンズはLマウント時代の傷だらけのSummitarやSummaronで済まそうという考えは痛いほど理解できるのだが、それでフレアだらけの写真を撮って結局飽きてしまうというのは本当に勿体無いことだと思う。
レンズの再研磨に是非があるのは知っている。だが、カメラは使ってナンボである。
せめて清掃だけでも出してクリアなレンズ本来の性能を出してあげてほしい。
話は戻るが、たまに120点な写真を出すこいつだが、なにぶん大口径で真鍮製の銅鏡は重い。
M3に付けてもM8に付けても重さでカメラがコテッとレンズ側に倒れてしまうぐらい。
沈胴できて軽くて安心安定のElmarばかりM3につけるようになってしまい、あまり外に持ち出されなくなったSummaritだが、M8が来てから立場が変わった。
雲と建物、柔らかさも硬さも (Leica M8 + Summarit 50mm 1.5)
デジタル故に絞ったり開放したりで何枚も何枚も撮って遊んでみたが、こいつデジタルライカにかなり相性がいいのではないかというのが正直な感想だ。
前回のM8の記事ではElmar 50mm 3.5を使って撮影していたが、悪くはない、悪くはないが何かちょっとデジタルに対して無理している感を感じた。
それに対してSummaritは無理なくデジタルでの描写に馴染んでいるような気がする。
恐ろしく感覚的な感想で申し訳ないが率直なところである。
開放で撮った写真、きったない机の上はあまり気にしないで下さい
(Leica M8 + Summarit 50mm 1.5)
まあノクチとまでは言わないが、開放の圧倒的柔らかさと絞った時の解像感はかなりライカらしい。
持ってて楽しいレンズであることは間違いない。
最近はこいつを開けたり絞ったりしながらパリの街を歩くのにハマっている。
クセ球だから…なんて防湿庫の肥やしにするのは勿体無い。
こいつはみんなが思っている以上にできる子である。