にゃんぶろ

備忘録代わりに色々書きます

Leica DII を買った話 

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どうだかっこいいだろう!

 

 

かっこいいというのは良いことだ。

男の子のロマンだ。いや、女の子にもロマンだ。

 

そんなかっこいいをカメラの形にしたのがこれだ。

 

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Leica DII と Summar 50mm 2.0

 

見よこの均整のとれた佇まい。

 

小柄なボディーは持つとずっしり重く鉄の塊という感触が感じられる。

80年の歳月を経てブラックペイントの合間に顔を覗かせる金色の真鍮地金。

職人が一つ一つ叩いて伸ばした板金はダイキャストには無い人間的な厚みがある。

前面のひん曲がったニッケルズマールと本体軍艦部のニッケルメタルが美しくマッチしている。

レンズキャップの黒光りまでもがなんとも憎い演出じゃないか。

 

本体のDIIは1932年2月1日発売日の初期出荷分。

レンズはライツ社がレンズにシリアルナンバーを打ち始めた最初の年である1933年製のズマールだ。

おそらくこの純正キャップといい、1933年頃にレンズキットとして売られていたセットそのまんまであると思われる。

 

1930年代っていうのはそれだけでロマン度が高いではないか。

自分の中では1945年という第2次世界大戦ラインを境にロマン度が一段階アップする。

 

1932年の2月といえばまだ満州国は建国されておらず第一次上海事変の最中であろうか。「話せば分かる」の五・一五事件はその名の通り1932年5月15日なのでまだ3ヶ月も先だ。

一方、ライツ社のあるドイツではまだ国家社会主義ドイツ労働者党は第一党になっておらず、この年の総選挙でようやく大勝し翌年のヒトラー内閣及び全権委任法へと繋がる。

第一次大戦以後、賠償金支払いによる強烈なインフレでドイツはめちゃくちゃであったがこの頃になってようやく経済が僅かながらも上向きになり、それに加えてヒトラーの狂乱に包まれたドイツはかつての大国としての活気を取り戻してきた時期とも言えるだろう。

そんな時期にライツ社は宿敵コンタックスに先を越されていた距離計内蔵の新兵器を持って一気にカメラ業界で攻勢に出たのである。

 

どうだろうか。ワクワクしてこない?

かの有名な大和と武蔵のツーショット写真もDII(もしくはDIII)で撮られたんだぞ?

我々が歴史の教科書でしか見たことない時代に生まれて生き抜いて今日まで塗装を少々剥がしながらも生き残ってきたカメラがまだ実用できるという事実にロマンを感じないかい?

 

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 前々からライカストアの中古棚にあったのは知っていた。

 

フランス人、というかヨーロッパ人は実用的でガシガシ使えるものがお好きなようで我々日本人やアメリカ人のようにコレクションして毎日眺めて愛でるという趣向は好みで無いらしい。

M6やM7は入荷した瞬間に飛ぶように売れていくのだがバルナックは商品棚の肥やしになっていることが多く、希少モデルだっていつまでも売れずに残っているのだ。

 

最近Twitterでライカ&フィルムカメラ界隈のフォロワーが増えたため、彼らの愛機が頻繁にTLに流れてくるのだがその中でも特に目を引くのがこのブラックペイント時代のバルナック。

常に”いつか買うリスト”には入っていたDII、DIIIだがこうも頻繁にかっこよく使いこなしてる画を見せられるとすごく欲しくなってくるではないか。

 

一度ついた物欲の火は簡単に消えるものではない。気が付くとライカストアの中古ページを眺めていた。

たくさん出てくるわ出てくるわ。

中にはドイツ空軍モデルやらフランス占領下ザール地方生産モデルなんかも出てくる。

 

その中でも目についたのがこのDII。

 

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やっぱりブラックペイントのバルナックにはニッケルが似合う。

軍艦部も付属のズマールもニッケル。完璧だ。

基本的にフランスのライカストアは買い取ったそのままで売るのが普通のようで今回もレンズセットで500ユーロというお買い得価格で出品されていた。

 

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セットのズマールはかなり状態が悪く価値なしと判断されたのだろうか。

内部塗装が剥がれ落ちてえらいことになっている。

とりあえずこいつは修理に出して暫くは自前のクロームエルマーで試してみることにしよう。

 

 

実写

 

前から憧れていた胸ポケットにDII、もう片方の胸ポケットに露出計というスタイルでスナップを撮り歩いてみた。

 

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バルナックはISO100なんかのストイックなフィルムを詰めて昼間にしっかり撮るカメラというよりはISO400のTRI-X辺りを適当に詰めて夕暮れ時に撮るカメラだという先入観に基づいて練り歩いたのだがどうも正解だったようだ。

 

ライカストアのおっさんにはシャッタースピード狂ってるからOHしとけと言われたが完璧に動いているのはさすがライカ。

86年前のカメラがさも当たり前かのように動いているという事実がそれだけでロマンである。

おそらく大して調整もされていないのにこの動きっぷり!あっぱれ!

 

写りは主にレンズに依るものだろうからここで言及するものではないだろうが、何と言ってもこの取り回しの良さは特筆すべきである。

M3に比べれば若干の距離計窓の見づらさはあるものの胸ポケットからサッと取り出して目についた被写体をスナップしすぐに仕舞える素晴らしさ。

スマホのカメラよりもシャッター音が控え目なため気楽かもしれない。

 

お、これいいんじゃない?っていうその場の気持ちだけですぐにスナップできるというこれこそ写真の醍醐味だ。

カメラが軽快であればあるほど気持ちの動きに機敏に反応してくれる。

こういうシンプルな撮影スタイルって写真の根本なんだなあと感じさせてくれた。

 

MマウントでもLマウントでもライカはライカなので別に写りに差はないだろう。

でもこのバルナック特有のスナップ感覚はなんと言っていいかふさわしい言葉が見つからないが、軽妙さに於いて撮影者の気持ちを高ぶらせるものであることは間違いないだろう。

 

 

ざっくりとした露出だけ頭に叩き込んで適当にスナップする。

こんな楽しい行為は他に無いだろう。

写真って元来こういうもんだったんだろうなあ。

ああ楽しい。